音楽

The Vinesのことを忘れないでほしい。全アルバムレビュー

※2018/08/27:内容更新

オーストラリア出身のロックバンド“The Vines”

The Strokes、The White Stripes、The Libertinesなど、そうそうたる顔ぶれが活躍した00年代初頭の“ガレージロック・リバイバル”ムーヴメントの代表バンドの1つですが、ぼくは、他のどのバンドよりもThe Vinesが大好きでした。

しかし、ボーカル”クレイグ・ニコルズ”がとても不安定な人間で、思うように活動できなかったこともあり、今や「過去のバンド」になってしまっています。

正直、ぼくも2~3年まともに聞いていなかったのですが、久々に聞いたら最高のロックだったので、バンドの歴史やアルバムを紹介しつつ、The Vinesの魅力を伝えたい。

どうか、The Vinesのことを忘れないでほしい。

1st『Highly Evolved』

地元ですら無名バンドだったThe Vinesですが、「factory」という曲のデモテープを音楽関係者に送ったことで、人生が一変します。

3分間のシンプルな曲が音楽業界の目に留まり、瞬く間に1stアルバム『Highly Evolved』をリリース。

しかも、これが世界で200万枚以上売れ、一気にスターダムの道を駆け上がりました。

Nirvana meets The Beatles

当時、The Vinesはよく“Nirvana meets The Beatles”と評価されました。

個人的に好きな表現ではありませんが、曲を紹介するのに便利なのでこの表現を採用します。

下の曲は、まさにThe Beatles的なサイケデリック・バラードです。

(Homesick)

そして、下の曲はまさにNIRVANA的な轟音グランジナンバーです。

(get free)

この曲はそれぞれ、アルバムの5曲目、6曲目です。

The Vinesというバンド、というよりボーカルのクレイグは非常に精神不安定な人間で、『Highly Evolved』というアルバムはそれを体現したような精神不安定な名盤です。

轟音ギターロックかと思えば、頭が溶けるようなサイケデリックがあったり、赤ちゃんが泣いているようなバラードがあったり、ストレートすぎるロックがきたりと、感情のジェットコースターみたいなアルバムで、The Vinesの真骨頂を味わえる名盤です。

ガレージロック・リバイバルの旗手っぽい曲を紹介すると、下の曲がまさにそんな感じです。

(Outtathaway)

アルバムリリースから10年以上経つ今、このアルバムは再評価されるべき名盤だと思います。

はじめてThe Vinesを聞くなら、無難にこのアルバムにしておきましょう。

2nd『Winning Days』

『Highly Evolved』ほどではないけど、世界中で売れたアルバムです。

NIRVANA的な曲よりThe Beatles的なバラードが多いアルバムで、The Vinesに激しさを求めるファンからは不評ですが、「彼らの真骨頂はサイケデリックにある」と思っているぼくは、『Highly Evolved』より好きです。1番好きなアルバムです。

このアルバムに収録されている“Ride”という曲は、日産自動車やi-PodのCMソングなので、もしかしたら聞いたことがあるかもしれません。

(Ride)

ぼくがThe Vinesに出会ったきっかけは、上の”Ride”のMV(当時はPVと呼んでいたなぁ)でした。

はじめて聞いたとき、「このバンドは僕のために生まれたバンドだ!」と思うほど体に馴染み、一瞬で恋に落ちたのを覚えています。

というか、クレイグ、イケメンすぎです。一時期、クレイグの髪型を真似ようとしていたなぁ。

ぼくがこのアルバムで1番、いや、大げさではなく世界で1番レベルで好きな曲は下の“Winning Days”です。

(Winning Days)

The Vinesの最大の特徴は、クレイグの「一人多重コーラス」にありますが、この曲よりそれが活かされている曲はありません。

本当に美しい曲で、学校帰りによく聞いていました。

アスペルガー症候群

そんな感じで順調に売れたThe Vinesですが、デビュー当時からクレイグには奇行が目立ちました。

(上のライブ映像を見れば分かると思います)

ライブ中も明らかに落ち着きがなく、白目向いてるし、音程はめちゃくちゃだし、演奏は放棄するし、バラードで急に叫ぶしでめちゃくちゃです。

日本公演でも客に暴言を吐き、英語が分かる客が言い返し、一触即発なんてこともありました。

そんなクレイグに耐えかねた1番の親友だったベーシストは、ライブの途中でステージを降り、そのままバンドを脱退してしまいます。

こうして順調な活動に陰りの見えたThe Vinesですが、さらにファンに衝撃が走ります。

クレイグが「アスペルガー症候群」であることが発覚したのです。

医者曰く、「1番向かない職業」であるロックスターに急激にのし上がり、たくさんの観客の目に晒されたクレイグの精神は、崩壊寸前だったのです。

こうしてThe Vinesは活動休止を余儀なくされ、名声から遠ざかっていくことになりました。

そういえば、Radioheadのトム・ヨークが、何かのイベントでクレイグを見たとき、「この人は誰かが救ってあげないと音楽ができなくなる」と思った。みたいなエピソードがあった気がします(※曖昧な記憶です)。

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3rd『Vision Valley』

そんなクレイグでしたが、何とか復活を果たし3rdアルバムがリリースされます。

しかし、これは完全に「抜け落ちた」という表現が似合うアルバムで、2nd以前の才能ほとばしるロックはありません。

(2ndまでらしい曲もありますが)

実際、この頃のインタビューを読むと、「昔の曲の一部は記憶がない」と発言しているので、精神を病んだことで文字通り音楽の才能が抜け落ちたのかもしれません。

ある種「葬式モード」なアルバムで、そのローな感じがぼくは好きなんですが、一般的には評価の低いアルバムです。

でも、大好きな曲“Spaceship”はこのモードだからこそ生まれた気がします。

(Spaceship)

上のライブ映像を見たときは、本当にびっくりしました。

まず、ものすごく太っています。これは薬の副作用によるものみたいです。

そして、ものすごく安定しています。今までではあり得ないくらい、ちゃんと演奏し、歌っているのです。

それを見て安心するとともに、別人になってしまったような、魂が抜け落ちてしまったような悲しさを覚えた記憶があります。

4th『Melodia』

そんな感じで落ちていくかと思われたThe Vinesですが、4thで復活を果たします。

『Melodia』は洋楽雑誌でも取り上げられていた記憶があるし、2ndまでとは比べものになりませんが、世界でもまぁまぁ売れました。

実際、曲の勢いも1stの頃に戻っています。

(Get Out)

また痩せてイケメンに戻っているし、ライブはかつてのような荒々しさが戻りつつ安定しているし、新しいベーシストも加入したし、これでThe Vinesも一安心だなぁ。と思った記憶があります。

そういえば、この年はフジ・ロックにも出演を果たしていますね。

(He’s A Rocker)

あと、4thには「True As The Night」という大名曲が収録されていて、ぼくはもう嬉しくてたまりませんでした。

(True As The Night)

「やった!これならいつまでもThe Vinesの音楽を聴けるぞっ!」、と思いました。

5th『Future Primitive』

前作のガレージロック・リバイバル路線とは異なり、非常にサウンドが豊かで、打ち込み、シンセ、エフェクトを多用したアルバムになりました。

ぼくは好きな路線ですが、世界ではあまり受けなかったようです。

“Candy Flippin’ Girl”とか“Cry” とか、大好きなんですけどね。

(Candy Flippin’ Girl)

でも、正直言うと、この時期はThe Vinesに以前ほど熱中しておらず、バンドの動向をほとんど追っていませんでした。

ぼくのような人が多くいて、どんどんThe Vinesは世界から消えていったのかもしれません。

正直、「毎回同じような曲をやっているバンド」であることは間違いないので、世界でもう一花咲かすことはないのでしょう。

6th『Wicked Nature』

ばくの記憶からThe Vinesが完全に抜け落ちそうな時期に、気がついたらリリースされていたアルバムです。

(Metal Zone)

気づけばメンバーが全員変わっているし、クレイグは短髪になっていました(でも、似合っています)。

調べてみたところ、家族に暴行を振るって警察のお世話になったりもしていました。

アルバム自体はグランジ色の強いアルバムで悪くないのですが、今や“The Vines”という名前を冠しただけの別のバンドになってしまっているので、かつての輝きはそこにはありません。

『Future Primitive』まではライブ映像なども見つかりますが、このアルバムのライブ映像はほぼ見つかりません。

こうして、The Vinesは世界から忘れられていきました。

今のところ、これがThe Vinesの最後のアルバムになっています。

追記:7th『In Miracle Land』

2018年、7thアルバム『In Miracle Land』がリリースされました!

¥1,800
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表題曲の「In Miracle Land」はかなり好きです!

まとめ~今もそれなりに聞かれてるっぽいです!~

「世界から忘れ去られた」

なんて言いましたが、日本にいるぼくが知らないだけで、今も地元ではそこそこ売れていて、むしろ小規模で細々活動している方がクレイグにとって幸せなのかもしれません。

実際、2018年に同郷バンド”JET”のライブツアーのオープニングアクトを務めているみたいですし、ストリーミングサービスで確認すると、今もけっこう聞かれているみたいです(昔の曲ばかり聞かれていますが)。

昔The Vinesを聞いていた人は、「Amazon Music Unlimited」などのストリーミングサービスで全アルバム聞けるので、また聞いてみてください!

最新作の「In Miracle Land」も聞けますよ~!

以上、「The Vinesのことを忘れないでほしい。全アルバムレビュー」でした。

それでは、また。

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